変形可能物体(Deformable Body)¶
学習目標¶
このチュートリアルを修了すると、以下の内容を習得できます:
- Isaac Sim で Deformable Body(Beta)機能を有効化する方法
- プリミティブメッシュから変形可能物体(Volume Deformable)を作成する方法
- 外部メッシュ(STL/OBJ 等)を取り込んで変形可能物体を作成する方法
- Volume Deformable と Surface Deformable の使い分け
- Deformable Body Material(物理マテリアル)の作成と適用方法
はじめに¶
前提条件¶
- チュートリアル 7: 属性の追加 を完了していること
所要時間¶
約 15〜20 分
概要¶
これまでのチュートリアルでは 剛体(Rigid Body) を扱ってきました。剛体はどれだけ力を加えても形状が変化しない物体です。一方、現実世界にはスポンジ、布、ゴム製品など、力を加えると変形する物体が数多く存在します。
Isaac Sim では Deformable Body(Beta) 機能を使って、このような 変形可能物体 をシミュレーションできます。変形可能物体には大きく2種類あります:
| 種類 | 説明 | 適用例 |
|---|---|---|
| Volume Deformable | 厚みのある閉じた形状(watertight)の物体 | スポンジ、ゴムブロック、臓器モデルなど |
| Surface Deformable | 薄い膜や表面のみの物体 | 布、紙、薄いシートなど |
Beta 機能について
Deformable Body は Beta 機能です。将来のバージョンで仕様が変更される可能性があります。
事前準備:Deformable 機能の有効化¶
Deformable Body を使うには、まず Isaac Sim の設定で機能を有効化する必要があります。この操作は最初に1回だけ行えば、以降は不要です。
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上部メニューから Edit > Preferences を開きます。
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Physics > General セクションで、Enable Deformable schema Beta (Requires Restart) をオンにします。

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Isaac Sim を 再起動 します。
変形メッシュの可視化(推奨)
変形可能物体を扱う際は、シミュレーションメッシュとコリジョンメッシュを可視化しておくと、メッシュの密度が適切かどうかを確認できます。ビューポートの Eye アイコン をクリックし、Show By Type > Physics > Deformables (beta) > All を選択してください。
ステージの準備¶
新しいステージを作成し、物理シミュレーションの準備をします。
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File > New で新しいステージを作成します。
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上部メニューから Create > Physics > Ground Plane を選択して、地面(Ground Plane)を追加します。
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Create > Physics > Physics Scene を選択し、物理シーンを追加します(テンプレートによっては既に含まれている場合があります)。
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Stage ウィンドウで作成された PhysicsScene を選択し、Properties パネルで以下の設定を行います:
- Enable GPU Dynamics をオンにする
- Broadphase Type を
GPUに設定する
GPU 設定は必須
Deformable Body は PhysX の GPU パイプラインで処理されるため、GPU Dynamics が無効の場合はシミュレーションが正しく動作しません。必ず上記の設定を行ってください。
パターン1:プリミティブメッシュから変形可能物体を作る¶
最も基本的な方法として、Isaac Sim のプリミティブメッシュ(Cube)を使って変形可能物体を作成します。
ステップ1:Xform とメッシュの作成¶
まず、変形可能物体のルートとなる Xform と、十分に分割されたメッシュを作成します。
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Stage ウィンドウで右クリックし、Create > Xform を選択します。名前を
DeformPlateに変更します(例:/World/DeformPlate)。 -
上部メニューから Create > Mesh > Settings を選択し、Mesh Settings ダイアログを開きます。
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Primitive Type を
Cubeに設定します。 -
U/V/W Verts Scale の値を増やします(例:
10〜30程度)。
メッシュの分割数について
分割数が少なすぎると変形が視覚的に確認できません。最初は 10〜30 程度から試してみてください。Ctrl + 左クリックで値を微調整できます。
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Create ボタンを押してメッシュを生成します。
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生成されたメッシュを
/World/DeformPlateの子にドラッグ&ドロップ してネストします。
ステップ2:Volume Deformable の適用¶
作成したメッシュに対して、変形可能物体の物理属性を付与します。
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ルート Xform(
/World/DeformPlate)を選択します。 -
右クリックし、Create > Physics > Deformable (beta) > Volume を選択します。

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ダイアログが表示されます。必要に応じて Hexahedral Simulation Mesh をオンにします(別のシミュレーションメッシュを生成して安定性を向上させたい場合)。

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Create ボタンを押します。
ステップ3:動作確認¶
-
/World/DeformPlateを選択し、Properties パネルで Translate の Z 値を1.0〜2.0程度に設定して持ち上げます。 -
PLAY ボタンを押してシミュレーションを開始します。
結果: 変形可能物体が地面に落下し、衝突時に変形する様子を確認できます。

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STOP ボタンを押してシミュレーションを停止します。
パターン2:外部メッシュから変形可能物体を作る¶
STL/OBJ/FBX 等の外部メッシュファイルを使って、任意の形状の変形可能物体を作成できます。
ステップ1:メッシュの取り込み¶
外部メッシュを Isaac Sim で使うには、まず USD 形式に変換する必要があります。
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上部メニューから File > Import を選択し、CAD Converter を使ってメッシュファイルを取り込みます。以降の画像や動画ではサンプルファイルを使用しています。

スケールの確認
STL ファイルは単位情報を持たないことが多いため、取り込み後は必ずスケール(メートル換算)を確認してください。
ステップ2:Deformable の種類を選択して適用¶
取り込んだメッシュの形状に応じて、Volume Deformable または Surface Deformable を選択します。
厚みのある閉じた形状の場合 → Volume Deformable¶
メッシュが閉じた立体形状(watertight)の場合は、Volume Deformable を使用します。
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Stage ウィンドウで右クリックし、Create > Xform を選択します(例:
/World/DeformMesh)。 -
取り込んだメッシュを Xform の子にドラッグ&ドロップ してネストします。
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Xform を選択し、右クリックから Create > Physics > Deformable (beta) > Volume を選択します。
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必要に応じて、ダイアログの Source Mesh に対象のメッシュを指定します。

Source Mesh について
レンダリング用メッシュとは別に、シミュレーションメッシュの生成元となる Source Mesh を指定できます。Source Mesh は Deformable サブツリーの外にあるメッシュも指定可能です。
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Create ボタンを押します。
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Z 方向に持ち上げて PLAY ボタンを押し、動作を確認します。

薄い膜や表面のみの場合 → Surface Deformable¶
メッシュが閉じていない薄板や膜状の形状の場合は、Surface Deformable を使用します。
- Xform を選択し、右クリックから Create > Physics > Deformable (beta) > Surface を選択します。
トラブルシューティング¶
変形が見えない、またはシミュレーションが不安定な場合は、以下の点を確認してください:
- 入力メッシュの解像度が不足している:メッシュの頂点数が少なすぎると、変形しても見た目に反映されません。メッシュの分割数を増やしてください。
- シミュレーションメッシュとコリジョンメッシュの解像度の不一致:両者の解像度が極端に異なると、収束問題が発生しやすくなります。
Deformable Body Material の設定¶
変形可能物体の物理的な性質(硬さ、弾性など)は、Deformable Body Material を作成して割り当てることで制御します。
ステップ1:Physics Material の作成¶
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上部メニューから Create > Physics > Physics Material を選択します。
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表示されるダイアログで Deformable Body Material を選択し、OK をクリックします。

ステップ2:パラメータの設定¶
作成した物理マテリアルの Properties パネルで、以下のパラメータを調整します:
| パラメータ | 説明 |
|---|---|
| Young's Modulus(ヤング率) | 物体の硬さを決定します。値が大きいほど硬くなります |
| Poisson's Ratio(ポアソン比) | 物体を引っ張った際の横方向の収縮率です(通常 0〜0.5) |
| Density(密度) | 物体の質量密度(kg/m³) |
| Dynamic Friction(動摩擦係数) | 物体が動いている際の摩擦の強さ |
パラメータの使い分け
シミュレーションメッシュには密度・ヤング率・ポアソン比が、コリジョンメッシュには摩擦係数が主に影響します。
ステップ3:マテリアルの割り当て¶
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変形可能物体(Deformable のルート Xform または関連する Prim)を選択します。
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Properties パネルの Physics Materials on Selected … セクションから、作成した Deformable Body Material を選択して割り当てます。

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PLAY ボタンを押し、動作を確認します。

まとめ¶
このチュートリアルでは以下のトピックを扱いました:
- Deformable Body(Beta)機能の有効化
- プリミティブメッシュからの Volume Deformable の作成
- 外部メッシュの取り込みと Volume / Surface Deformable の使い分け
- Deformable Body Material による物理パラメータの設定と割り当て
剛体との違い
剛体(Rigid Body)は形状が変化しないため計算が効率的ですが、変形可能物体はメッシュの各頂点を個別に計算するため、計算コストが高くなります。シミュレーションの目的に応じて、剛体と変形可能物体を使い分けてください。